室蘭・エトモ半島

 四季の野鳥観察

 測量山は200mにも満たない山ですが、渡り鳥は大昔から南北交流の道しるべとして利用してきました。200種類を超える野鳥が観察されたことは、渡り鳥の中継地と言われるゆえんでもあります。
 テレビ塔の立ち並ぶ展望台からは、室蘭のほぼ全域と、太平洋から噴火湾の奥までを一望できます。測量山でバードウオッチングをするときは、一度この展望台に上り、周辺の地形、方角、遊歩道、樹林相など、全体像を頭に入れておくと森の中で迷うこともないでしょう。

 (春〜夏) さえずり、子育て。1年中で一番にぎやかな季節です。唐松平から女測量山を経てマスイチ浜に抜ける遊歩道は、春の探鳥コースの定番で、街の騒音も届かない別天地です。鳥は早起きですから、できれぱ朝早く出かけましょう。日の出前から、小鳥たちのコーラスに包まれます。ウグイス、コマドリ、アオジ、キビタキ、クロツグミ、シジュウカラなど。遠くから「タララララ... 」と木をたたくアカゲラのドラミングが心地よく流れてきます。さえずりを持たないキツツキの仲間は木をたたく音で会話をするのでしょう。他にオオアカゲラ、コゲラなどが見られますが、クマゲラは近年見られなくなっています。
 森を抜けると、目の前にマスイチ浜の展望が広がります。ニつの展望台には望遠鏡が設置され、無料で利用できるのもうれしい配慮です。オオセグロカモメやウミウの子育てが見られ、イソヒヨドリも顔を出します。頭上にはアマツバメ、イワツバメが乱舞し、沖合にはミズナギドリ、アカエリヒレアシシギの大群も現れます。

 (秋)北国の秋は足早に訪れます。北海道で生まれ育った若い夏鳥たちが、渡リのために測量山に集まってきます。メジロ、シジュウカラ、ホオジロ。特にヒヨドリは、何千羽という大群を幾つもつくり、滑るように海上に出て行きます。そんな群れを襲うハヤプサの急降下を見ることもしぱしぱです。バードウオッチャーが最も大勢集まるのもこの時期です。お目当ての夕力の渡りは9月中旬のハチクマに始まり、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、トビなど11月まで続き、10月になると多い日には1,000羽を数えることもあります。

 (冬)港の内外でカモ類の姿が増えます。コオリガモ、スズガモ、クロガモ、ウミアイサ、シノリガモ、ヒメウ等。また近年は天然記念物のコクガンも立ち寄るようになりました。

 
 室蘭の渡り鳥


 秋の渡リは、残暑の8月からウグイスの仲間のエゾムシクイやコバルト色のコルリなどが南へ渡り始め、9月には真ん丸い目のコサメピタキやメポソムシクイなどが渡りだします。9月下旬にはノゴマの地鳴きが一面に溢れ、上空ではハチクマなどの猛禽類が柱状に舞い上がって渡っています。10月には、夜明け前からクロツグミが動きだし、さらに日の出後30分位経つとシジュウカラやアオジなどのスズメの仲間が動きだします。夜もヨタカやフクロウ達がやって来て、昼夜を問わず色々な野鳥が見られます。10月下旬にはカシラダカやペニマシコなどがあふれる中を、ヒヨドリの大群が流れるように整然と飛び交って圧倒させられます。

 11月にはウソの群が口笛の様な鳴き声で飛び交い、ときにはホシガラスやギンザンマシコなどが見られることもあリます。最後にルリビタキやミソサザイが渡り去って秋の渡りが終了します。

 8月から11月まで、途切れることなく数日ごとに種類を変えながら渡って行く様子は、色々な草花が時期を変えて次々に咲くのと同じような感じです。ほとんどの渡り鳥たちは、生まれて間もない若鳥たちぱかりですが、毎年同じ時期に同じルートをたどって渡っています。平均寿命が1〜2年程の野烏たちが生きる知恵を親から子へ引き継ぎながら生きているのでしょう。

 野鳥が見られる時間帯は、日の出後30分から8時頃までが最も多く、よく晴れた日よりもぐずついた天候の方が多いようです。
 室蘭から海上に渡り出たヒヨドリやアオジ、シジュウカラなどは、対岸の駒ケ岳付近に上陸して谷間を抜けて松前を通過し、日本海沿岸を南下して1〜2週間で茨城県、長野県、富山県などに達しています。種類によってはさらに本州中南部から東南アジアに渡って越冬します。


            2002年発行の情報誌「きらん」に掲載された本多さん(四季の野鳥観察)、伴野さん(室蘭の渡り鳥)
          の文章から一部を引用させてもらいました。